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番外編 「黄葉の山」

 カルラは、山の中を進んでいた。
 視線の先には、ナウラとツユチカの姿がある。
 音を立てないように跡を付けていたカルラは、突然の声に飛び上がるほど驚いた。
「何してんの?」
 気配を感じさせず背後に立っていたのは、郷(さと)を留守にしている筈のカヤだった。
 カルラが向かっていた先をみつめると、カヤは低い声で尋ねた。
「あの2人、どこへ行くんだ」
 いつものように家へやって来たナウラが、何か言い淀んでいるのは見てわかった。何の用事だろうと、カルラとツユチカが言葉を待っていると、いきなりナウラがツユチカの腕をつかんで、外へ出ていったのだ。
 その思い詰めた様子を訝しく思ったからこそ、こうしているのであって、どこへ行き、何をしようとしているのかは、カルラの方こそ聞きたかった。
「行っちゃうぞ」
 カヤの言葉で我に返ったカルラは、2人の姿を見失うまいと後を追った。
 歩きながら手短に説明すると、カヤもついてくると言う。
 カルラは黙って頷いた。

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