源氏物語の和歌「朧月夜」

源氏20歳

 −深き夜のあはれを知るも 入る月のおぼろげならぬ契りとぞ思ふ−(光源氏)
 −憂き身世にやがて消えなば尋ねても 草の原をば問はじとや思ふ−(朧月夜)
 −いづれぞと露の宿りをわかむ間に 小笹が原に風もこそ吹け−(光源氏)
  「花宴」の巻

 −世に知らぬ心地こそすれ有明の 月の行方を空にまがへて−(光源氏)
  「花宴」の巻

 −梓弓いるさの山に迷ふかな なほ見し月の影や見ゆると−(光源氏)
 −心入るかたならませば弓張りの 月なき空に迷はましやは−(朧月夜)
  「花宴」の巻

源氏23-24歳

 −心からかたがた袖を濡らすかな あくと教ふる声につけても−(朧月夜)
 −嘆きつゝ我が世はかくて過ぐせとや 胸のあくべき時ぞともなく−(光源氏)
  「賢木」の巻

 −木枯の吹くにつけつゝ待ちしまに 覚束なさの頃も経にけり−(朧月夜)
 −あひ見ずて忍ぶる頃の涙をも なべての秋の時雨とや見る−(光源氏)
  「賢木」の巻

源氏26歳

 −逢瀬なき涙の川に沈みしや 流るゝみをのはじめなりけん−(光源氏消息)
 −涙川浮かぶみなわも消えぬべし 流れて後の瀬をも待たずて−(朧月夜)
  「須磨」の巻

 −浦にたくあまたにつゝむ恋なれば くゆる煙よ行く方ぞなき−(尚侍=朧月夜消息)
  「須磨」の巻



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