「夢」

ふわりと抱きしめられた。
かすかな煙草のにおい。
身体に悪いからやめてって、あんなに言ったのに。
でも、懐かしいあなたの香り。
「ようやく逢えた」
そうね。ずっと待っていたわ。ずっと。
でも。
待って。
どうしてあなたは、ここにいるの?
何故、私はあなたに抱きしめられているの?
あなたはもう、いないのに。

…夢、だったんだ。
そうよね。
あなたは、もう、いない。
「いるよ、ここに」
私、まだ夢を見てるの?
──夢でもいい。覚めないで。

この腕、この広い胸、
そして、あなたのこの香り、
すべてが、私を幸せにしてくれる。

夢でもいい…
永遠(とわ)に、このまま…


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