源氏物語の和歌「空蝉」

源氏17歳

 −つれなきを恨みも果てぬしのゝめに とりあへぬまで驚かすらん−(光源氏)
 −身の憂さを嘆くにあかで明くる夜は とり重ねてぞ音も泣かれける−(空蝉)
  「帚木」の巻

 −見し夢を逢ふ夜ありやと嘆くまに 目さへあはでぞ頃も経にける− 寝る夜なければ(光源氏)
 返歌なし
  「帚木」の巻

 −帚木の心を知らで園原の 道にあやなく惑ひぬるかな− 聞こえん方こそなけれ(光源氏)
 −数ならぬ伏せ屋に生ふる名の憂さに あるにもあらず消ゆる帚木−(空蝉)
  「帚木」の巻

 −空蝉の身をかへてける木のもとに 猶人柄のなつかしきかな−(光源氏)
 −空蝉の羽に置く露の木隠れて 忍び忍びに濡るゝ袖かな−(空蝉)
  「空蝉」の巻

 −問はぬをもなどかと問はで程ふるに いかばかりかは思ひ乱るゝ− 「益田」はまことになむ(空蝉)
 −空蝉の世は憂きものと知りにしを また言の葉にかゝる命よ− はかなしや(光源氏)
  『益田』=ねぬ縄の苦しかるらむ人よりも 我ぞ益田のいける甲斐なき (拾遺集、読み人知らず)
  「夕顔」の巻

 −ほのかにも軒端の萩を結ばずば 露のかごとを何にかけまし−(光源氏)
 −ほのめかす風につけても下萩の 半ばは露にむすぼほれつゝ−(軒端の萩)
  「夕顔」の巻

 −逢ふまでの形見ばかりと見し程に ひたすら袖の朽ちにけるかな−(光源氏)
 −蝉の羽も裁ち変へてける夏衣 かへすを見てもねは泣かれけり−(空蝉)
 −過ぎにしも今日別るゝも二道に 行く方知らぬ秋の暮れかな−(光源氏)
  「夕顔」の巻



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