源氏22歳、六条御息所29歳(葵の上26歳)
−登りぬる煙はそれとわかねども なべて雲井のあはれなるかな−(光源氏)独詠
「葵」の巻
−限りあれば薄墨衣浅けれど 涙ぞ袖を淵となしける−(光源氏)独詠
「葵」の巻
−雨となり時雨るゝ空の浮雲を いづれの方とわきて眺めむ−(中将・葵の上の兄)
−見し人の雨となりにし雲井さへ いとゞ時雨にかき暮らす頃−(光源氏)
「葵」の巻
−草がれのまがきに残る撫子を 別れし秋の形見とぞ見る−(光源氏)
−今も見てなかなか袖をくたすかな 垣ほ荒れにし大和撫子−(大宮・葵の上の母)
「葵」の巻
−亡き魂ぞいとゞ悲しき寝し床の あくがれ難き心ならひに−(光源氏)独詠
「葵」の巻
−君亡くて塵積もりぬる常夏の 露うち払ひ幾夜寝ぬらむ−(光源氏)独詠
「葵」の巻
源氏23歳正月
−あまた年今日あらためし色ごろも きては涙ぞふる心地する−(光源氏)
−新しき年とも言はずふるものは ふりぬる人の涙なりけり−(大宮・葵の上の母)
「葵」の巻
源氏26歳
−鳥部山もえし煙もまがふやと 海士のしほ焼く浦みにぞゆく−(光源氏)
−亡き人の別れやいとゞ隔たらん 煙となりし雲井ならでは−(大宮・葵の上の母)
「須磨」の巻